相続手続・遺言書作成・離婚問題に関する基礎知識集

離婚問題に関する基礎知識

慰謝料とは?

相手方の不貞など、有責不法な行為によって離婚するにいたったような場合には、その精神的苦痛についての慰謝料請求が認められます。
離婚に伴う慰謝料は、次のように分けられます。

 

①個別慰謝料

個別の侵害行為から生じる慰謝料のことです。たとえば、暴力、不貞行為などはこれに該当します。

 

②離婚慰謝料

離婚そのものによる精神的苦痛の慰謝料のことです。

 

なお、判例では、①と②を区分して慰謝料を算定しているものもありますが、これを区分せずに一括しているものが大勢のようです。

 

●財産分与と慰謝料

財産分与と慰謝料とは、その性質が異なるため、財産分与後であっても慰謝料を請求することができます。このことについて、最高裁では以下のように判示しています。

 

【判例】

「財産分与がなされても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解せられないか、そうでないとしても、その額および方法において、請求者の精神的苦痛を慰藉するに足りないと認められるものであるときには、すでに財産分与を得たという一事によって慰藉料請求権がすべて消滅するものではなく、別個の不法行為を理由として離婚による慰藉料を請求することを妨げられないものと解するのが相当である。」

 

●慰謝料請求権の消滅時効

離婚そのものによる慰謝料については、離婚時から消滅時効が進行すると解されています。

②個別慰謝料については、損害および加害者を知ったときから時効が進行しますが、夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません。

 

●不貞の相手方に対する慰謝料請求

原則として、他方配偶者から不貞の相手方(いわゆる不倫相手など)に対する慰謝料請求は認められています。最高裁の昭和54年3月30日判決では次のように判示しています。

 

「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者のこうむった精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである」

 

しかし、その後、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者の不法行為責任の有無については多くの論説がなされ、現在では以下の判例理論が確立されているようです。

 

「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。けだし、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利または法的保護に値する利益があるとはいえないからである。」

 

●不貞配偶者とその相手方との関係

判例によると、不貞を行った配偶者(以下不貞配偶者)とその相手方の行為は、他方配偶者に対する共同不法行為と解されています。また、不貞配偶者とその相手方との関係は不真正連帯債務の関係になるため、連帯債務の規定(民法434条~439条)は、原則として適用されません。

なお、共同不法行為者間(不貞配偶者とその相手方)の内部的な求償関係については認められています。たとえば、不貞配偶者一人が慰謝料の全部もしくは一部の弁済をした場合、本来負担すべき責任の割合(原則として平等)で、相手方に対して求償できます。

 

●不貞配偶者の子からの慰謝料請求

親の不貞行為によって親子の共同生活を失った子どもに、その不貞の相手方への慰謝料請求ができるかどうかについて、最高裁では次のように判示しています。

 

【判例】

「妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が妻子のもとを去った右男性と同棲するにいたった結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。けだし、父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によって行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被ったとしても、そのことと右女性の行為との間には相当因果関係がないものといわなければならないからである。」

 

なお、この最判後の下級審判決には、同棲開始当時11~15歳であった未成年の子への慰謝料支払義務を不貞配偶者の相手方に課したものがあります。当時成人ないしほぼ成人に近い子の請求は、上記子らと異なり法の保護に値する人格的利益侵害が認められないとして請求を棄却しています。

 

●夫婦間に性交渉がない場合の慰謝料請求

貞操義務は夫婦間に排他的な性関係が結ばれることを前提にしているものと思われます。判例でも夫婦の性生活について婚姻の基本となるべき重要事項だとしています。

※貞操義務については夫婦の同居、協力、扶助の義務のページをご参照下さい。

 

これに関連して、下級審には、配偶者が性交渉を全く拒否し続けた結果、婚姻関係が破綻に至った場合、拒否した配偶者は他方に慰謝する義務があるとしたものがあります。

また、性交渉を拒否した、しないに関わらず、全く性交渉に及ばなかった夫は専ら婚姻の解消に原因があるとして慰謝料の支払を命じたものもあります。

なお、婚姻中の夫婦に性交渉を求めかつ応じる義務があったとしても、暴行や脅迫をもって配偶者を姦淫する行為は強姦罪にあたる場合があります。