相続手続・遺言書作成・離婚問題に関する基礎知識集

離婚問題に関する基礎知識

婚姻費用とは

婚姻費用とは、夫婦が、その財産・収入・社会的地位などに相応した結婚生活を営むために必要な一切の費用(衣食住、医療費、娯楽費、交際費、貯蓄、保険など)のことです。

一般的には、収入の多い側が少ない側に対して、自分と同程度の生活を家族にさせるために支払うべき費用になります。

なお、民法は婚姻費用の分担義務とは別に、夫婦の扶助義務を定めています。これらの義務は、通説・判例によると、「概念的には異なるとしても、本質的には異なるものではなく、いずれも夫婦間における共同生活保持のために必要な費用を意味する」と解釈されているようです。

※夫婦の扶助義務については、夫婦の同居、協力、扶助の義務のページをご参照下さい。

 

また、夫婦の未成年子に関する費用(養育費・教育費など)もこれに含まれます。そのほか、経済的に独立して生活することが期待できず、親の援助を受けている成年子、いわゆる未成熟子(病弱、大学生など)についても、その費用を婚姻費用に含ませることが認められている事例があります。

※成年に達している未成熟子について、扶養請求によるべきとした審判例もあります。(詳しくは扶養義務のページをご参照下さい。)

一方、未成年であっても、就職して経済的に独立をしている場合には婚姻費用からは外れることになります。

 

●婚姻費用の分担

婚姻費用の分担にあたっては、当事者双方の資産・収入その他一切の事情が考慮されます。分担方法としては、金銭によるもののほか、現物の提供や家事・育児などといった労働も考えられます。

決定方法としては、夫婦の協議によりますが、不調の場合は調停、審判で決めることになります。
なお、裁判所による分担額の算定方法としては、東京・大阪養育費等研究会が発表した「標準的算定方式」が広く用いられているようです。

 

●夫婦の別居と婚姻費用

婚姻費用の分担が特に問題となるのは、夫婦が別居している場合が多いと思われます。夫婦共同生活を前提とする婚姻費用分担を、別居期間中に請求できるのかという議論もあるようですが、通説・判例ともこれを認めています。

 

①婚姻が破綻状態の場合

判例によれば、「一般に夫婦間の婚姻費用分担の程度は、いわゆる生活保持義務であって、自己と同程度の生活を家族にさせる義務がある」とされています。しかし、婚姻の破綻状態の程度、相手方の経済的余裕によっては、分担の程度を考える事例もみられます。

※生活保持義務については扶養義務のページをご参照下さい。

 

②有責配偶者(婚姻破綻原因について責任がある者)からの請求

判例によれば、「仮に不貞行為をした者が離婚請求を行ったとしても、自己の最低限度の生活を営む権利を放棄するものではなく、婚姻中である限り、少なくとも最低限度の生活を営むための婚姻費用分担請求権を失うとすべき法的根拠はない」として、最低限度の生活維持の限度で有責配偶者の婚姻費用分担請求を認めるのが通例になっているようです。

※夫婦の一方が同居、協力の義務に著しく違背しながら他方に対して婚姻費用の分担を求めることは、権利の濫用として許されず、相手方は免責される場合があるとする裁判例もあります。この場合、子どもの監護費用を婚姻費用の分担として請求することは認められています。

 

●婚姻費用の始期と終期

婚姻費用は過去に遡って請求することが可能です。

婚姻費用分担義務の始期については、

①分担の必要が生じたとき
②別居開始時
③請求時
④調停申立時

など様々ですが、判例では③請求時ないし④調停申立時を採用するものが多いようです。

また、婚姻費用分担義務の終期については、「別居の解消、または、離婚に至るまで」とするのが一般的なようです。

 

●婚姻費用と財産分与

判例によると、

①離婚訴訟において、裁判所が財産分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方の一切の事情を考慮すべきものである。

②婚姻継続中における過去の婚姻費用分担の態様は①にいう事情のひとつにほかならない。

③したがって、裁判所は、当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の精算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるとしています。

※財産分与についての詳細は財産分与のページをご参照下さい。