相続手続・遺言書作成・離婚問題に関する基礎知識集

相続手続・相続問題に関する基礎知識

相続分なきことの証明書

被相続人から相続分以上の遺贈や生前贈与を受けた相続人がいれば、その相続人の相続分は

ゼロとなり遺産の取得はできないことになります。

 

この場合、一般的に考えられる方法としては相続放棄という方法がありますが、民法915条による時間の制約があるため、場合によっては相続放棄ができない可能性も想定されます。

 

また、相続分譲渡証明書の稿でもお話ししたとおり、遺産分割協議も状況によっては長引く可能性があり、遺産分割協議書の作成を待つのも気の長い話しになるかも知れません。

 

そこで、遺産分割実務では、生前贈与のような特別な利益を受けた相続人が、その趣旨を記載し

た書面をもって、他の相続人に遺産を取得させることがあります。

 

この書面がいわゆる「相続分なきことの証明書」と呼ばれている書類になります。「特別受益証明書」あるいは「相続分皆無証明書」などとも呼称されることがありますが、基本的には同様の効果を生じさせるための書面です。

 

この相続分なきことの証明書は相続登記の原因証書として扱われるため、遺産に不動産のある場

合において遺産分割や正規の相続放棄手続きを経ることなく同様の結果を導き出す便法として活

用されることがあります。

 

実務上は、財産の取得を希望しない相続人に対して、あるいは特定の相続人に(不動産などの)

特定の財産を取得させるための便宜的方法として利用されるケースが多いのですが、後になって

問題が生じることも考えられます。

 

例えば、遺産の取得を希望しない相続人に対する便宜的な方法(事実上の相続放棄)として「実際には生前贈与を受けていないのに、生前贈与を受けた」というような内容の書面を作成したと仮定しましょう。

 

後日、事実との相違を主張して、その証明書の効力を問題に紛争にまで発展する可能性が残って

しまいます。

 

もちろん、現実にはここまで事実と違う内容の証明書を作ることは殆どないと思いますが、目先の結果ばかりを急がずに、可能であれば遺産分割協議書を作成することをお勧めします。

 

このほか、相続放棄とは違い相続債務がある場合には原則として当該債務を免れることができない点については「相続分の譲渡」の場合と同様ですので注意が必要です。

 

相続実務において相続分なきことの証明書が持つ利便性は大変有用なものですが、慎重に利用

しなければならない書面であるといえるでしょう。